「安全管理特別指導事業場」を
解除できたケースの紹介
運輸に付帯するサービス業(駅のホーム、階段、エスカレーター、エレベーター、コンコース、トイレなどの清掃作業)を主な事業とするA社(社員数約250名)は、労働災害が多発したことから、所轄の労働局より「安全管理特別指導事業場」(以下「安特」)に指定され、ひつお湯な改善を行うよう指示を受けました。
A社ではこれまでも社長を先頭に積極的に安全衛生に取り組んできましたが、抜本的な労働災害防止を講じるため、労働安全コンサルタントを活用することとし、日本労働安全衛生コンサルタント会の支部に依頼があったものです。
過去の主な労働災害
- 洗浄機を使用中、穏やかなs家でタイヤに踵を挟む。
- 洗浄機で作業中に熱中症となる。
- モップで駅の階段清掃中、立ち眩みで転倒。
- トイレブースのストッパーに躓き転倒。
- トイレ清掃中、濡れた床面ですべり転倒。
- 便器を覗きながら清掃中、スポンジについた洗剤が目に入る。
- トイレ洗面台の扉を点検中に指を挟む。
労働局から改善指導を
講ずるように指示された主な事項
- 年間安全衛生計画を策定し、計画的な安全衛生活動を行うこと。
- 安全衛生委員会規定を整備し、安全衛生組織の整備とその効果的な運用を図ること。
- リスクアセスメントを行い、その結果に基づくリスクの低減措置を実施すること。
- 安全作業マニュアルを作成し、それに基づいた作業の実施について教育をすること。
- 有効なリスクアセスメント体制、過重労働・メンタルヘルス来ての整備、安全作業手順の整備をすること。
- 熱中症予防対策(WBGT値の活用)、職場の喫煙対策、メンタルヘルス対策。
コンサルタントによる
診断指導の内容
担当した労働安全コンサルタントのCとD(以下「コンサルタント」)は、最初に所轄労働基準監督署の担当官と安特指示事項の趣旨と改善ポイント等について意見交換を行いました。
次に、A社の担当者とともに現場巡視を各班ごとに順次行い、問題点及び改善すべき事項等を次のとおりまとめました。
- トイレの洗浄液について、取扱説明書、化学物質の危険・有害性等を記載した文書であるSDS(安全データシート)がない。(SDSの入手と対策)
- 単独作業での危険防止対策が不十分(一人KYで危険確認とその回避)
- 激しい雷雨時の「作業中止の基準」がない。
- 高圧洗浄機で作業中、締め切った室内は熱中症の恐れがある。(WBGT値(暑さ指数)の活用)
- 洗浄機のケーブルに躓き転倒するおそれがある。(リスクアセスメントの実施)
- トイレ清掃時のメガネ着用がない。(作業手順の作成と教育の実施)
- 事務所への昇降階段のてすりが片側で転落のおそれがある。(手すり設置の検討)
- 事務所から道具を積んだ台車をホームへ移動させる際、転落のおそれがある(柵を設けること。指差呼称を励行すること。)
改善の状況
- コンサルタントの診断・指導を踏まえ、コンサルタントと相談しながら早急に現場の改善を行っています。
- 労働局の改善指示事項である年間安全衛生計画の策定、安全衛生委員会来ての整備、安全作業マニュアルの作成と作業者教育などについて、コンサルタントとともにそれぞれ実施しています。
- リスクアセスメントについては、コンサルタントが作成した「リスクアセスメント概論と導入実施の作業手引書」で実施。演習結果は、写真入りで、場所、作業行動、使用用具、作業のポイント、リスクレベルに分類され、初心者にも分かりやすく感じられる「作業手引書」へと反映されました。
[後日談]
依頼期間である5月かた翌年3月までの間に、改善指導回数は14回に及びましたが、必要な改善措置をすべて図ることができ、安特も解除されました。
コンサルタント業務終了後3ヶ月ほどして、担当したコンサルタントは、その後の状況を確認するため事業現場を訪問したところ、著しい改善がなされていたことから。厚生労働省の「安全衛生優良企業認定制度」に是非挑戦していただくようお願いをしました。